相続税

第0 目次

第1 総論
第2 相続税の税率
第3 相続税の特例
第4 相続税における名義預金と税務調査の可能性
第5 遺留分減殺請求に関する相続税等の取扱い
第6 遺産分割協議と第二次納税義務

*1 東弁リブラ2012年1月号の「遺産の分け方によって,税額がここまで変わる」が参考になります。
*2 国税庁HPに相続税法基本通達及び財産評価基本通達が載っています。
   また,奥行価格補正率表・側方路線影響加算率表・二方路線影響加算率表・地積区分表・不整形地補正率表・間口狭小補正率表・奥行長大補正率表・がけ地補正率表につき,平成19年分以降と平成18年分以前とで内容が異なっています。
*3 国税不服審判所HPの「相続税法関係」に,相続税法に関する審判が載っています。
*4 終身保険又は養老保険の名義を途中で変更した場合,将来,保険金又は解約返戻金を受領した時点で贈与税が発生することがあります(日経スタイルHPの「生命保険を名義変更すると、贈与税がかかるの? 」参照)。
*5 相続情報ラボHPに「相続時精算課税制度の6つのメリット8つのデメリット」が載っています。
*6 公益社団法人全日本不動産協会HP「賃貸借契約の際に無償返還の届出書が提出された土地の相続税法上の評価」が載っています。
*7 路線価の設定されていない道路と路線価の設定されている道路とに接している宅地の評価で、その路線価の設定されていない道路に設定された特定路線価についての側方路線影響加算、ニ方路線影響加算、三方又は四方路線影響加算の適用はありません(鈴木宏昌税理士事務所HP「路線価がない道路に接している宅地は特定路線価を設定できる」参照)。

第1 総論

1 平成27年1月1日以降,遺産総額から借金等を控除した正味の遺産額が,基礎控除額(3000万円+法定相続人の数×600万円。例えば,妻と子供2人が相続人の場合,4800万円)を超える場合,相続税が課税される可能性がありますから,必ず税理士にご相談下さい(相続税法15条)。
    相続税の申告は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります(相続税法27条1項)し,延納又は物納についても相続税の申告の時までに税務署に申請する必要があります(相続税法39条,42条)。

2(1) 法定相続人の中に養子がいる場合の法定相続人の数は,配偶者の連れ子を養子とした場合を除き(相続税法15条3項1号),以下のとおりです(相続税法15条2項)。
① 被相続人に実子がいる場合,養子のうち1人までを法定相続人に含めます。
② 被相続人に実子がいない場合,養子のうち2人までを法定相続人に含めます。
(2) 被相続人の養子のうち相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる養子(=不当減少養子)は,基礎控除額を計算するに当たって考慮されません(相続税法基本通達63-2)。

3 相続人が未成年者又は85歳未満の障害者である場合,相続税について税額控除があります(国税庁HPの「未成年者の税額控除」及び「障害者の税額控除」参照)。

4 相続税の申告は,被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内に行う必要があるのであって,遺産分割協議が成立していない場合でも相続税の申告は待ってもらえません。

5 相続税の申告の場合,土地の評価額は,固定資産税評価額(「固定資産税の課税標準額)とは異なります。)の7分の8倍ぐらいになります。
  ただし,正確には,国税庁の路線価図に基づいて計算されます(国税庁の財産評価基準書参照)。

6 土地の時価:相続税評価額:固定資産税評価額はおおむね,10:8:7の関係にあります。

7 相続税における主たる非課税財産は以下のとおりです(相続税法12条)。
① 墓地,仏壇
② 国,地方公共団体,特定の公益法人に寄付をした財産
③ 生命保険金のうち,500万円×法定相続人の数
④ 死亡退職金のうち,500万円×法定相続人の数
⑤ 交通事故による損害賠償金

8 同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得したすべての人は,連帯して相続税を納付する義務を負います(相続税法34条1項)。
  そして,相続税の連帯納付義務の確定は,各相続人等の固有の相続税の納税義務の確定という事実に照応して,法律上当然に生ずるものですから,連帯納付義務につき格別の確定手続を要するものではありません(最高裁昭和55年7月1日判決)。

9 相続税の申告をした場合であっても,相続税の申告書の記載のみによって私法上の遺産分割の効果が発生することはありません(平成20年1月23日付の国税不服審判所の裁決参照)。

10 国税庁HPの質疑応答事例「遺産の換価分割のための相続登記と贈与税」によれば,共同相続人のうちの1人の名義で相続登記をしたことが単に換価のための便宜のものであり,その代金が分割に関する調停の内容に従って実際に分配される場合,贈与税の課税が問題になることはありません。

11 相続税の申告をしていない場合,税務署から,「相続税の申告等についてのご案内」又は「相続税についてのお知らせ」が送付されてくることがあります。
   前者は,相続税の申告が必要と見込まれる人に送付されるのに対し,後者は,相続税の申告が必要となる可能性がある人に送付されます(中央合同会計事務所HPの「税務署から「相続税の申告等についてのご案内」や「相続税についてのお知らせ」が届いたときの対応について」参照)。

12 福岡高裁宮崎支部平成28年5月26日決定は,相続税申告書及びその各添付書類の写しは,文書提出命令における提出義務の除外事由に該当すると判断しました。

13 保険契約者と被保険者が異なる契約において,保険契約者が死亡したために契約者を変更した場合,解約返戻金の額が,生命保険契約に関する権利の評価額として,相続税の課税対象となります(公益財団法人生命保険文化センターHPの「Q.契約者が死亡したので契約者を変更すると,税金は?」参照)。

第2 相続税の税率

1 平成26年12月31日までに相続が発生した場合の,相続税の税率は以下のとおりです(改正前の相続税法16条)。
① 1000万円以下の金額          10%
② 1000万円を超え3000万円以下の金額 15%
③ 3000万円を超え5000万円以下の金額 20%
④ 5000万円を超え1億円以下の金額    30%
⑤ 1億円を超え3億円以下の金額       40%
⑥ 3億円を超える金額              50%

 
2 平成27年1月1日以降に相続が発生した場合の,相続税の税率は以下のとおりです(相続税法16条)。

① 1000万円以下の金額          10%
② 1000万円を超え3000万円以下の金額 15%
③ 3000万円を超え5000万円以下の金額 20%
④ 5000万円を超え1億円以下の金額    30%
⑤ 1億円を超え2億円以下の金額       40%
⑥ 2億円を超え3億円以下の金額         45%
⑦ 3億円を超え6億円以下の金額       50%
⑧ 6億円を超える金額            55%

第3 相続税の特例

1 相続税の申告期限までに遺産が未分割である場合,相続税法上,原則として,以下の特例が受けられなくなります。
① 配偶者に対する相続税額の軽減(相続税法19条の2第1項)
→ 配偶者の法定相続分に対する相続税か,1億6000万円の相続分に対する相続税のいずれか多い方が免除されます。
② 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(小規模宅地等の特例。租税特別措置法69条の4第1項)
→ 賃貸マンション又はマイホームを相続する場合,50%又は80%の評価減が認められています。
    ただし,平成22年4月1日以降,小規模宅地等の特例の適用要件が厳しくなりました。
③ 特定事業用資産についての相続税の課税価格の計算の特例(特定事業用資産の特例。租税特別措置法69条の5第1項)
→ 特定の中小同族法人の株式を相続ずる場合,10%の評価減が認められています。

2 相続税の申告期限までに遺産分割協議を成立させられない場合,法定相続分等により分割した相続税の申告書を提出して納税をした上で,相続税の申告書と同時に,「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出するという手続をとることになります(相続税法19条の2第2項ただし書)。
   そして,遺産分割協議が成立した時点で,法定相続分より少ない割合の遺産しかもらえずに税額の減った相続人は4ヶ月以内に更正の請求をし,法定相続分より多い割合の遺産をもらえて税額の増えた相続人は修正申告をすれば,特例の適用が引き続き認められます(修正申告の特則につき相続税法31条,更正の請求の特則につき相続税法32条)。

3 申告書の提出期限から3年以内に遺産が分割できない場合,「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を,その提出期限後3年を経過する日の翌日から2か月以内に相続税の申告書を提出した税務署長に対して提出する必要があります(相続税法19条の2第2項ただし書の括弧書及び相続税法施行令4条の2)。

4 ①都市営農農地(生産緑地地区内にある農地のうち,特定市の市街化区域内に所在するもの。)の場合,終生営農(=一生農業を続けること。)等を条件に,②町村部の市街化区域内にある農地(大阪府の場合,一般市街化区域農地と一致します。)及び③市街化調整区域内にある農地の場合,20年間の営農継続等を条件に,相続税の納税猶予が認められています(農業相続人の相続税の納税猶予の特例。租税特別措置法70条の6)。
    ただし,特定市(正式には近畿圏整備法の既成都市区域及び近郊整備区域にある市のことですが,大阪府の場合,すべての市が含まれます。)の市街化区域内にある農地(特定市街化区域農地といいます。)の場合,平成4年1月1日以後,相続税の納税猶予が認められなくなりました(都市営農農地は除きます。)。

5 市街化区域とは,既に市街地を形成している区域,及びおおむね10年以内に優先的,計画的に市街化を図るべく区域をいい(都市計画法7条2項),日本の国土の3.9%を占めます。

6 市街化調整区域とは,市街化を抑制すべき区域をいい(都市計画法7条3項),日本の国土の10.3%を占めます。

7 生産緑地地区とは,市街化区域内にある農地等で,500㎡以上の規模の区域といった条件に該当する一団のものの区域について,都市計画で指定されたものをいいます(生産緑地法3条1項)。

第4 相続税における名義預金と税務調査の可能性

1 形式的には配偶者や子・孫などの名前で預金しているものの,収入等から考えれば,実質的にはそれ以外の真の所有者がいる,つまり,それら親族に名義を借りているのに過ぎない預金のことを名義預金といいます。
   相続税を申告する場合,形式的には孫等の名義になっている名義預金についても相続財産として申告する必要があります。

2 以下のいずれかの基準に該当する場合,名義預金と判定される結果,名義人のいかんにかかわらず,被相続人の預金であると税務署に判定される危険が高いです。
① 使用印鑑
→ 家族名義の預金の印鑑のすべてが同一印鑑であり,しかも,被相続人が通常,自分の預金に使用しているものと同じであった場合
② 受取利息
→ 家族名義の預金の利息を被相続人名義の預金等に入金し,被相続人が費消していたと認められる場合
③ 預金通帳等の保管状況
→ 家族名義の預金の預金通帳等を,被相続人が保管していた場合
④ 贈与税の申告の有無
→ 贈与税の申告がなかった場合

第5 遺留分減殺請求に関する相続税等の取扱い

1 相続した財産について相続税の申告をしていた場合,遺留分減殺請求により相続できる財産が増加した人は,結果として確定した相続税額に不足が生じたことを知った日から10ヶ月以内に,相続税の修正申告書(相続税法1条の2第4号)を提出することができます(相続税法31条1項)。

2 遺留分減殺請求により相続できる財産が減少した人は,「遺留分による減殺の請求に基づき返還すべき,又は弁償すべき額が確定したこと。」を知った日から4ヶ月以内に,更正の請求をすることで相続税の還付を受けることができます(相続税法32条3号)。
   ただし,この場合,遺留分減殺請求により相続できる財産が増加した人は相続税の修正申告書を提出する必要があるのであって,修正申告書を提出しなかった場合,税務署長が更正又は決定をすることとなります(相続税法35条3項)。

3 平成15年3月31日法律第8号(平成15年4月1日施行)による改正前は,①相続税の申告書の提出期限は,相続の開始があったことを知った日から6ヶ月以内でした(相続税法27条1項。現在は10ヶ月以内。)し,②相続税の修正申告書の提出期限も6ヶ月以内でした(相続税法31条1項)し,③相続税法32条3号の文言は「遺留分による減殺の請求があったこと。」というものでした。

4 相続財産の全体が,相続税の基礎控除額である3000万円(相続税法15条)を下回る場合,遺留分減殺請求により取得した財産の額が遺留分の額を超えない限り,いずれの相続人についても新たな課税関係が発生することはありません。
   ただし,遺留分減殺請求により取得した財産の額が遺留分の額を超える場合,110万円を超える分(平成13年1月1日以後の贈与の取扱いに関する租税特別措置法70条の2の2・相続税法21条の5参照)について贈与税が課税され,贈与者と受贈者は贈与税について連帯納付義務を負うことになります(相続税法34条4項)。

5 暦年課税の場合,贈与税はその年の1月1日から12月31日までの1年間に,贈与により取得した財産の価額の合計額から基礎控除額の110万円を控除した残りの額に対して課税されます。
   この場合の基礎控除額は,贈与をした人ごとではなく,贈与を受けた人ごとに1年間で110万円となります(相続税法21条の2参照)。
   よって,1年間に複数の人から贈与を受けた場合,その贈与を受けた財産の価額の合計額から控除できる基礎控除額は贈与者の人数にかかわらず110万円となります。

第6 遺産分割協議と第二次納税義務

1 遺産分割協議は,相続の開始によって共同相続人の共有となった相続財産について,その全部又は一部を,各相続人の単独所有とし,又は新たな共有関係に移行させることによって,相続財産の帰属を確定させるものですから,国税の滞納者を含む共同相続人の間で成立した遺産分割協議が,滞納者である相続人にその相続分に満たない財産を取得させ,他の相続人にその相続分を超える財産を取得させるものであるときは,国税徴収法39条(無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務に関する条文)にいう第三者に利益を与える処分に当たる可能性があります。
   そして,この場合において,滞納者に詐害の意思のあることは国税徴収法39条所定の第二次納税義務の成立要件ではありません(最高裁平成21年12月10日判決)。
   そのため,例えば,相続人の一人である甲が国税(所得税,住民税等)を滞納している場合において,遺産分割協議の際,甲以外の相続人である乙が,甲の老後の面倒を見るという約束で相続財産の全部を取得した場合,乙は,甲が滞納している国税について第二次納税義務を負う可能性があるということです。

2 国税徴収法39条所定の第二次納税義務者は,主たる課税処分につき国税通則法75条に基づく不服申立てをすることができます(最高裁平成18年1月19日判決)。

3 国税徴収法39条所定の第二次納税義務者が主たる課税処分に対する不服申立てをする場合,国税通則法77条1項所定の「処分があったことを知った日」とは,当該第二次納税義務者に対する納付告知(納付通知書の送達)がされた日をいい,不服申立期間の起算日は納付告知がされた日の翌日です(最高裁平成18年1月19日判決)。

4 国税局長又は税務署長は,納税者の国税を第二次納税義務者から徴収しようとするときは,その者に対し,徴収しようとする金額,納付の期限その他必要な事項を記載した納付通知書により告知しなければなりません(国税徴収法32条)。
   この納付通知書による告知(=納付告知処分)は,本来の納税義務者に対する課税処分(主たる課税処分)により確定した国税を徴収するためのものではありますものの,単なる徴収手続上の一処分にとどまるものではなく,本来の納税義務者とは別人格の第二次納税義務者に対し,新たに納税義務を成立させ確定させる性質も有しています。

第7 相続財産から控除できる葬儀費用

○国税庁の相続税法基本通達によれば,以下のとおりです(国税庁HPのタックスアンサー4129「相続財産から控除できる葬式費用」も同趣旨です。)。
(葬式費用)
13-4 法第13条第1項の規定により葬式費用として控除する金額は、次に掲げる金額の範囲内のものとする。(昭57直資2-177改正)
(1) 葬式若しくは葬送に際し、又はこれらの前において、埋葬、火葬、納骨又は遺がい若しくは遺骨の回送その他に要した費用(仮葬式と本葬式とを行うものにあっては、その両者の費用) 
(2) 葬式に際し、施与した金品で、被相続人の職業、財産その他の事情に照らして相当程度と認められるものに要した費用
(3) (1)又は(2)に掲げるもののほか、葬式の前後に生じた出費で通常葬式に伴うものと認められるもの
(4) 死体の捜索又は死体若しくは遺骨の運搬に要した費用
(葬式費用でないもの)
13-5 次に掲げるような費用は、葬式費用として取り扱わないものとする。(昭和57直資2-177改正)
(1) 香典返戻費用 
(2) 墓碑及び墓地の買入費並びに墓地の借入料
(3) 法会に要する費用
(4) 医学上又は裁判上の特別の処置に要した費用
1(1) 交通事故及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
   交通事故及び債務整理については,無料の電話相談もやっています。
(2) 相談予約の電話番号は「お問い合わせ」に載せています。
  
2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。