遺産分割審判

第0 目次

第1 総論
第2 遺産分割審判における,不動産の分割方法
第3 遺産分割審判の確定時期及び効力
第4 被相続人名義の預貯金

* 家事事件手続法200条1項に基づく遺産管理人の選任については,本橋総合法律事務所HPの「遺産管理人はどのような権限を有しますか」が参考になります。

第1 総論

1 遺産分割審判の対象となる財産は,相続開始時に存在し,かつ,分割時にも存在する未分割の相続財産です。

2 遺産分割審判では,相続人の固有財産,葬儀費用,遺産管理費用といった問題を取り扱うことはできません。

3 遺産分割審判は,遺産全体の価値を総合的に把握し,これを共同相続人の具体的相続分に応じ民法906条所定の基準に従って分割することを目的とするものです。
   そのため,共同相続人という身分関係にある者又は包括受遺者といった相続人と同視しうる関係にある者(民法990条)の申立てに基づき,これらの者を当事者とし,原則として遺産の全部について進められるべきものです(最高裁昭和50年11月7日判決)。
(2)  共同相続人の一部から遺産を構成する特定不動産の共有持分権を譲り受けた第三者が当該共有関係の解消のためにとるべき裁判手続は,遺産分割審判ではなく,共有物分割訴訟である(最高裁昭和50年11月7日判決)。 


4 代償分割により負担した債務が資産の移転を要するものである場合(例えば,被相続人名義の土地を単独で取得する代わりに自己名義の遊休地を他の相続人に代償分割により譲渡した場合)において,その履行として当該資産の移転があったときは,その履行をした者は,その履行をした時においてその時の価額により当該資産を譲渡したこととなります(所得税基本通達33-1の5)。
   そのため,当該資産の時価が取得した時よりも値上がりしていた場合,譲渡所得が発生する可能性があります。

5(1) 遺産分割審判は,民法907条2項及び3項を受けて,各共同相続人の請求により,家庭裁判所が民法906条に則り,遺産に属する物又は権利の種類及び性質,各相続人の職業その他一切の事情を考慮して,当事者の意思に拘束されることなく,後見的立場から合目的的に裁量権を行使して具体的に分割を形成決定し,その結果必要な金銭の支払,物の引渡し,登記義務の履行その他の給付を付随的に命じ,あるいは,一定期間遺産の全部又は一部の分割を禁止する等の処分をなす裁判であって,その性質は本質的に非訴事件ですから,公開の法廷における対審及び判決によってする必要はないとされています(最高裁昭和41年3月2日大法廷判決)。
(2)   遺産分割審判に付随してなされる寄与分を定める審判もまた,家庭裁判所が共同相続人間の実質的な衡平を実現するため合目的的に裁量権を行使してする形成的処分であって,その性質は本質的に非訟事件ですから,公開の法廷における対審及び判決によってする必要はないとされています(最高裁昭和60年7月4日決定)。

6 共同相続人間における遺産確認の訴えは,固有必要的共同訴訟です(最高裁平成元年3月28日判決)。

第2 遺産分割審判における,不動産の分割方法

1 遺産の中に不動産がある場合,家庭裁判所は遺産分割審判において,以下のいずれかの方法で分割します。
① 現物分割(民法258条2項参照)
・ 被相続人の遺産の中に不動産が多数存在するか,一筆の土地でも,面積が広くて利用形態等から見ても分筆が可能である場合に利用される方法です。
② 代償分割(債務負担による分割。家事事件手続法195条参照)
・ 遺産の不動産を取得したいと希望する一人又は数人の相続人にそれを取得させ,遺産取得の超過分を債務負担という方法で清算させる方法であり,現物分割と併用して行われます(最高裁平成11年4月22日判決の裁判官遠藤光男,同藤井正雄の補足意見参照)。
   この方法をとるためには,①遺産の価格が適正に評価され,代償金の額が適正に算定されること,及び②具体的相続分を超える遺産を取得する相続人に,代償金支払能力があることが必要です(②の要件につき最高裁平成12年9月7日決定(判例秘書)参照)。
   例えば,②につき,銀行支店長名義の融資証明書なり預金通帳の写しなりで確認します。
③ 換価分割
・ 遺産の不動産を現物分割することができず,かつ,代償分割をすることもできない場合(例えば,(a)相続人に代償分割の債務負担能力がない場合,及び(b)不動産に多額の抵当権が設定されていて相続人に返済能力がない場合)に行われる方法です。
換価分割の場合,その不動産を換価して,その代金から換価に要する経費等を除いた残額を,共同相続人が分けることになります。
・   換価の方法には,(a)終局審判における遺産の競売(民法258条2項),及び(b)審判前の遺産の換価(家事事件手続法194条1項ないし3項。具体的には,任意売却又は競売になります。)があります。
   (b)審判前の遺産の換価を行う場合,共同相続人の中から換価人が選任される他(家事事件手続法194条1項及び2項参照),売却代金を保管する財産管理者(家事事件手続法201条1項)として通常,当該換価人の代理人弁護士が選任され,終局審判まで売却代金を保管することになります(競売の場合につき民事執行規則181条,任意売却の場合につき家事事件手続法103条7項参照)。
   その後,財産管理者は,終局審判に従って各共同相続人に売却代金を分配することになります。
④ 共有取得
・ この方法は,後日に共有物分割の問題(民法258条1項)を残すので,(a)現物分割,代償分割ができず,しかも換価を避けるのが相当であるような場合(例えば,その不動産が共同相続人の一人の居住用不動産である場合),又は(b)当事者が共有による分割を希望し,それが不当でない場合のような限られた場合に行われます。

2 代償分割の場合,遺産の不動産を取得した相続人が後日,当該不動産を売却した際,譲渡所得税を課税されることがあります。

3 相続により相続人の共有となった財産の分割について,共同相続人間に協議が整わないとき,又は協議することができないときは,家事事件手続法の定めるところにより家庭裁判所が審判によってこれを定めるべきものであり,通常裁判所が判決手続で判断すべきではありません(最高裁昭和62年9月4日判決参照)。

4 大阪高裁平成14年6月5日決定(判例秘書掲載)は,以下のとおり判示しています。
   遺産分割は,共有物分割と同様,相続によって生じた財産の共有・準共有状態を解消し,相続人の共有持分や準共有持分を,単独での財産権行使が可能な権利(所有権や金銭等)に還元することを目的とする手続であるから,遺産分割の方法の選択に関する基本原則は,当事者の意向を踏まえた上での現物分割であり,それが困難な場合には,現物分割に代わる手段として,当事者が代償金の負担を了解している限りにおいて代償分割が相当であり,代償分割すら困難な場合には換価分割がされるべきである。
   共有とする分割方法は,やむを得ない次善の策として許される場合もないわけではないが,この方法は,そもそも遺産分割の目的と相反し,ただ紛争を先送りするだけで,何ら遺産に関する紛争の解決とならないことが予想されるから,現物分割や代償分割はもとより,換価分割さえも困難な状況があるときに選択されるべき分割方法である。

第3 遺産分割審判の確定時期及び効力

1 相続人は,遺産の分割の審判に対して即時抗告をすることができ(家事事件手続法198条1項1号),その期間は,相続人が当該審判の告知を受けた日から2週間と定められています(家事事件手続法86条1項)。
    そして,2週間が経過した時点で遺産分割審判が確定し,効力を生じることとなります(家事事件手続法74条2項ただし書)。

2 相続人は,各自が単独で即時抗告をすることができますものの,遺産の分割の審判は,相続人の全員について合一にのみ確定すべきものですから,相続人の1人がした即時抗告の効果は,他の相続人にも及ぶものであり,相続人ごとに審判の告知を受けた日が異なるときは,そのうちの最も遅い日から2週間が経過するまでの間は,当該審判は確定しません(家事事件手続法86条2項のほか,かつての家事審判法時代の判例として最高裁平成15年11月13日決定)。

3 各相続人への審判の告知の日が異なる場合における遺産の分割の審判に対する即時抗告期間については,相続人ごとに各自が審判の告知を受けた日から進行しますから,相続人は,自らが審判の告知を受けた日から2週間を経過したときは,もはや即時抗告をすることは許されません(家事事件手続法86条2項のほか,かつての家事審判法時代の判例として最高裁平成15年11月13日決定)。

4 寄与分を定める処分の審判に対する即時抗告(家事事件手続法198条1項4号)についても,遺産分割審判に対する即時抗告の場合と同様の取扱いとなります(最高裁平成15年11月13日決定)。

5 確定した遺産分割審判は,金銭の支払,物の引渡し,登記義務の履行その他の給付を命ずる部分について,執行力ある債務名義と同一の効力を有します(家事事件手続法75条)。
    そのため,確定した遺産分割審判に違反した場合,強制執行をされる可能性があります。

第4 被相続人名義の預貯金

1 共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となります(最高裁大法廷平成28年12月19日決定)。

2(1)ア 例えば,共同相続人において被相続人が負っていた債務の弁済をする必要がある,あるいは,被相続人から扶養を受けていた共同相続人の当面の生活費を支出する必要があるなどの事情により被相続人が有していた預貯金を遺産分割前に払い戻す必要があるにもかかわらず,共同相続人全員の同意を得ることができない場合に不都合が生ずるのではないかが問題となり得る。
   このような場合,現行法の下では,遺産の分割の審判事件を本案とする保全処分として,例えば,特定の共同相続人の急迫の危険を防止するために,相続財産中の特定の預貯金債権を当該共同相続人に仮に取得させる仮処分(仮分割の仮処分。家事事件手続法200条2項)等を活用することが考えられ,これにより,共同相続人間の実質的公平を確保しつつ,個別的な権利行使の必要性に対応することができるといわれています(最高裁大法廷平成28年12月19日決定の裁判官大谷剛彦,同小貫芳信,同山崎敏充,同小池裕,同木澤克之の補足意見)。
イ 仮分割の仮処分は,遺産分割調停中にも利用できる手続です。
(2) 仮分割仮処分の類型として以下の三つが考えられると指摘する裁判官がいます(相続・後見・高齢者財産管理ブログの「「仮分割の仮処分」の申立てについて」参照)。
類型1 扶養を受けていた共同相続人の生活費とか施設入所費の支払を目的とする場合
類型2 葬儀費用とか相続税の支払など相続に伴う費用の支払を目的とする場合
類型3 被相続人の医療費と被相続人の債務の支払を目的とする場合

3 最高裁大法廷平成28年12月19日決定の裁判官鬼丸かおるの補足意見には以下の記載があります。
(1) 被相続人名義の預貯金債権について,相続開始時の残高相当額部分は遺産分割の対象となるがその余の部分は遺産分割の対象とならないと解することはできず,その全体が遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。多数意見はこの点について明示しないものの,多数意見が述べる普通預金債権及び通常貯金債権の法的性質からすると,以上のように解するのが相当であると考える。
(2) ①相続開始後に相続財産から生じた果実,②相続開始時に相続財産に属していた個々の財産が相続開始後に処分等により相続財産から逸出し,その対価等として共同相続人が取得したいわゆる代償財産(例えば,建物の焼失による保険金,土地の売買代金等),③相続開始と同時に当然に分割された可分債権の弁済金等が被相続人名義の預貯金口座に入金された場合も,これらの入金額が合算された預貯金債権が遺産分割の対象となる(このことは,果実,代償財産,可分債権がいずれも遺産分割の対象とならないと解されることと矛盾するものではない。)。

4  相続開始から遺産分割までの間に共同相続に係る不動産から生ずる金銭債権たる賃料債権は,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し,その帰属は,後にされた遺産分割の影響を受けません(最高裁平成17年9月8日判決)。 
1(1) 交通事故及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
   交通事故及び債務整理については,無料の電話相談もやっています。
(2) 相談予約の電話番号は「お問い合わせ」に載せています。
  
2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。