父子関係及び母子関係の成立

第1 実子の種類

□ 実子には①嫡出子及び②非嫡出子があり,嫡出子には①生来嫡出子及び②準正嫡出子があります。
生来嫡出子には,①推定される嫡出子(=婚姻中懐胎子),②推定されない嫡出子及び③推定の及ばない嫡出子があります。
準正嫡出子には,①婚姻準正による嫡出子(789条1項)及び②認知準正による嫡出子(789条2項)があります。
□ 嫡出子とは,婚姻関係にある男女間で懐胎・出生した子をいいます。
□ 推定される嫡出子とは,婚姻継続中に懐胎した場合の嫡出子をいいます。
具体的には,①婚姻成立の日から200日を経過した後,又は②婚姻解消の日から300日以内に生まれた子は,婚姻中に懐胎したものと推定され(民法772条2項),妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子であると推定されます(民法772条1項)から,推定される嫡出子となります。
□ 推定されない嫡出子とは,婚姻継続中に懐胎したのではない場合の嫡出子をいいます。
具体的には,婚姻成立の日(=婚姻届での日)から200日を経過せずに生まれた子は,同棲開始の日から200日を経過した後に生まれた子であっても,推定されない嫡出子となります(最高裁昭和41年2月15日判決。なお,先例として,大審院連合部昭和15年1月23日判決及び大審院昭和15年9月20日判決参照)。
□ 推定の及ばない嫡出子とは,妻が子を懐胎すべき時期に,既に夫婦が事実上の離婚をして夫婦の実態が失われ,又は遠隔地に居住して,夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかであるなどの事情が存在する場合の嫡出子をいいます(最高裁昭和44年5月29日判決及び最高裁平成10年8月31日判決参照)。

第2 父子関係の成立

1 嫡出子の場合
□ ①推定される嫡出子について親子関係の存在を否定する場合,出生を知ったときから1年以内に(民法777条),嫡出否認の訴えをもって,父子関係の存否を争う必要があります(民法775条)。
なお,①夫が子の出生前に死亡したとき,又は②子の出生を知ったときから1年以内に死亡したとき,その子のために相続権を害される者(=共同相続人)その他夫の3親等内の血族は,嫡出否認の訴えを提起できます(人事訴訟法41条1項)。
□ 嫡出否認の訴えの出訴期間が1年であるとする民法777条は,憲法13条及び14条1項に違反しません(最高裁昭和55年3月27日判決)。
民法777条は,身分関係の法的安定を保持する上から十分な合理性を有する規定です(最高裁平成12年3月14日判決)。
□ ①推定されない嫡出子及び②推定の及ばない嫡出子について親子関係の存在を否定する場合,出生を知ったときから1年を経過していても,実親子関係の存否の確認の訴え(人事訴訟法2条2号)をもって,父子関係の存否を争うことができます(①につき大審院昭和15年9月20日判決。②につき最高裁平成12年3月14日判決)。
2 懐胎時期に関する証明書
□ 平成19年5月21日以後に出生の届け出がされたものについては,平成19年5月7日付の法務省民事局長の通達に基づき,婚姻の解消又は取消し後300日以内に生まれた子のうち,医師の作成した「懐胎時期に関する証明書」が添付され,当該証明書の記載から推定される懐胎の時期の最も早い日が婚姻の解消又は取消し後である場合,推定の及ばない嫡出子となる結果,前の夫を父としない出生の届出ができることとなりました。
□ 懐胎の時期(=推定排卵日)は,出生証明書に記された出生日と妊娠週数から逆算した妊娠2週0日に相当する日を決定した上で,この期日に前後各14日間ずつを加え算出されます。
この場合,妊娠週日(妊娠週数)は,妊娠8週0日から妊娠11週6日までの間に計測された超音波検査による頭殿長(とうでんちょう)を考慮して決定されます。
   ただし,不妊治療に対して行われる生殖補助医療が実施された場合,その実施日が懐胎の時期となります。
3 実親子関係の存否の確認の訴えが権利の濫用となる場合
□ 戸籍上Xと亡夫との夫婦の嫡出子として記載されているYがXの実子ではない場合において,①YとXとの間には,XがYに対して実親子関係不存在確認調停を申し立てるまでの約51年間にわたり実親子と同様の生活の実体があり,その間,XはYがXの実子であることを否定したことがないこと,②判決をもって実親子関係の不存在が確定されるとYが軽視し得ない精神的苦痛及び経済的負担を受ける可能性が高いこと,③XがYに対して実親子関係不存在確認を求める本件訴訟を提起したのは,上記調停の申立てを取り下げて約10年が経過した後であり,Xが本件訴訟を提起するに至ったことについて実親子関係を否定しなければならないような合理的な事情があるとはうかがわれないことなどといった事情の下では,戸籍上の父母とその嫡出子として記載されている者との間の実親子関係について父母の子が不存在確認請求をすることが権利の濫用に当たる可能性があります(最高裁平成18年7月7日判決)。
□ 戸籍上AB夫婦の嫡出子として記載されているYが同夫婦の実子ではない場合において,①Yと同夫婦との間に約55年間にわたり実親子と同様の生活の実体があったこと,②同夫婦の長女Xにおいて,Yが同夫婦の実子であることを否定し,実親子関係不存在確認を求める本件訴訟を提起したのは,同夫婦の遺産を承継した二女Cが死亡しその相続が問題となってからであること,③判決をもって実親子関係の不存在が確定されるとYが軽視し得ない精神的苦痛及び経済的不利益を受ける可能性が高いこと,④同夫婦はYとの間で嫡出子としての関係を維持したいと望んでいたことが推認されるのに,同夫婦は死亡しており,Yが養子縁組をして嫡出子としての身分を取得することは不可能であること,⑤Xが実親子関係を否定するに至った動機が合理的なものとはいえないことなどといった事情の下では,戸籍上の父母とその嫡出子として記載されている者との間の実親子関係について父母の子が不存在確認請求をすることが権利の濫用に当たる可能性があります(最高裁平成18年7月7日判決)。
4 非嫡出子と認知
□ 非嫡出子と父との間の法律上の親子関係は認知(民法779条)によってはじめて発生します(最高裁平成2年7月19日判決)。
なお,認知は遺言によってすることもできます(民法781条2項)。
□ 認知者の意思に基づかない届出による認知は,認知者と被認知者との間に親子関係があるときであっても無効です(最高裁昭和52年2月14日判決)。
そして,子その他の利害関係人は認知無効の訴えを提起できます(民法786条参照)。
□ 子,その直系卑属又はこれらの者の法定代理人(例えば,未婚の母)は,父の死亡の日から3年を経過するまでは,認知の訴えを提起でき(民法787条),認知請求権は放棄することはできません(最高裁昭和37年4月10日判決)。
□ 認知の訴えを提起する前に,原則として事前に認知調停を申し立てる必要があります(家事事件手続法257条1項)。
そして,当事者間に合意が成立した場合,合意に相当する審判が下されます(家事事件手続法277条1項)。
□ 認知の訴えは,父又は母の死亡の日から3年を経過した後はできないとする民法787条ただし書の趣旨は,父又は母の死後も長期にわたって身分関係を不安定な状態に置くことによって身分関係に伴う法的安定性が害されることを避けようとする点にあります(最高裁昭和44年11月27日判決)から,憲法13条に違反しません(最高裁大法廷昭和30年7月20日判決)。
□ 未成年の子の法定代理人(例えば,未婚の母)は,子が意思能力を有する場合にも,子を代理して認知の訴を提起することができます(最高裁昭和43年8月27日判決)。
5 準正
□ 準正とは,父母の婚姻を原因として非嫡出子に嫡出子たる身分を取得させる制度をいい,民法789条1項は認知の後に婚姻がなされる婚姻準正を規定し,2項は婚姻の後に認知がなされる認知準正を規定しています。
□ 婚姻準正の効果として,非嫡出子は婚姻の時から嫡出子たる身分を取得します。
□ 認知準正の効果として,非嫡出子は認知の時からではなく婚姻の時から嫡出子たる身分を取得すると解されています。
なぜなら,認知準正の効果は認知の時から生じるとすると,父母が婚姻しても,母の死後に父の任意認知があったり,父の死後に強制認知があったりした場合,相続に際してその子は嫡出子としての相続分を主張できないという不合理が生じるからです。

第3 母子関係の成立

□ 我が国の民法上,母とその子との間の母子関係の成立について直接明記した規定はないものの,母子関係は懐胎,出産という客観的な事実により当然に成立します(最高裁平成19年3月23日判決参照。なお,母とその非嫡出子との間の母子関係に関する先例として,最高裁昭和37年4月27日及び最高裁昭和54年3月23日判決参照)。
□ 民法の実親子に関する現行法制は,血縁上の親子関係を基礎に置くものであるものの,民法が,出産という事実により当然に法的な母子関係が成立するものとしているのは,その制定当時においては懐胎し出産した女性は遺伝的にも例外なく出生した子とのつながりがあるという事情が存在し,その上で出産という客観的かつ外形上明らかな事実をとらえて母子関係の成立を認めることにしたものであり,かつ,出産と同時に出生した子と子を出産した女性との間に母子関係を早期に一義的に確定させることが子の福祉にかなうということもその理由となっていたものと解されます(最高裁平成19年3月23日判決)。
□ 母とその非嫡出子との間の母子関係は認知によっても発生します(民法779条)。
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