寄与分

第0 目次

第1 総論
第2 相続人でない限り寄与分が認められないこと
第3 寄与分における,金銭等出資型の具体例
第4 家事審判における寄与分の主張
第5 扶養義務及び扶養請求調停
第6 民法904条の2の条文

* 厳選相続弁護士ナビに「寄与分を獲得したい人が知るべき8つの知識|認められるケースと事例」が載っています。

第1 総論

1 被相続人の生前に,被相続人に対し,①家業に従事したり,②療養看護をしたり,③扶養したり,④金銭等を出資したり,⑤財産を管理したりするなどして,被相続人の財産の維持又は増加について「特別の寄与」をした相続人の具体的相続分は,法定相続分よりも多くなります(寄与分。民法904条の2)。

2(1) 家業従事型,療養看護型又は扶養型で寄与分が認められるためには,相続人が,被相続人との身分関係上一般的に期待される以上の寄与行為を,原則として無償で,継続的かつフルタイムに準ずる形式で行う必要があります。
    なぜなら,被相続人と相続人との間には扶養義務がある(民法877条)ので,扶養義務の履行以上のことをしない限り寄与分として評価するに値しないとされているからです。
(2) 療養看護については,寄与分を主張するよりも扶養請求調停の申立てをした方がいいと思います。

3 被相続人との身分関係上一般的に期待されるレベルは,①配偶者,②親子,③兄弟姉妹,④一般の親族の順に低くなります。

4 寄与分における,財産管理型の例としては,相続人が被相続人の財産の管理を行ない,管理費用の支出を免れさせるなどして相続財産の維持に寄与した場合があります。
    この場合,原則として無償で行っていれば寄与分が認められることになります。

5 寄与分に関する金額をいくらと見積もるかについては明確な基準がありませんから,共同相続人の協議で定めるのは非常に難しく,相続争いの原因の一つになることが非常に多いです。

6 寄与分が考慮されるのは,昭和55年5月17日法律第51号による改正後の民法が施行された,昭和56年1月1日以降に開始した相続に限られます。

7 寄与分は遺留分に優先することがあり(特段の事情がない限り遺留分を侵害できないことにつき東京高裁平成3年12月24日決定参照),遺留分は遺贈に優先し(民法1033条),遺贈は寄与分に優先します(民法904条の2第3項)。

8 Re-gardens HPに以下の記事があります。
寄与分①遺留分・被相続人の意思(遺贈)との関係
寄与分②現実的な遺留分との関係
寄与分③労務提供型
寄与分④財産給付型
寄与分⑤被相続人の経営する会社に対する寄与
寄与分⑥相続人の経営する会社による寄与
寄与分⑦療養看護型(配偶者)
寄与分⑧療養看護型(特別の寄与に関する目安と評価方法)
寄与分⑨扶養型

第2 相続人でない限り寄与分が認められないこと

1 長男の妻といった相続人以外の人が介護等でいかに被相続人に貢献したとしても,相続人ではないというだけの理由で,寄与分が認められることはありません。
    そのため,相続人以外の人に対し遺産の一部を渡したい場合,その旨の遺言書を作成するか,その人と養子縁組をする必要があります。

2   相続税法上は養子の数に制限があります(相続税法15条2項参照)ものの,民法上は養子の数に制限はありません。

3 扶養義務者以外の人が扶養料を支払った場合の取扱いについては,新銀座法律事務所HPの「立て替えた扶養料の請求方法」が参考になります。

第3 寄与分における,金銭等出資型の具体例

〇寄与分における,金銭等出資型の具体例は以下のとおりであり,原則として無償で,かつ,相続開始時に金銭等出資の効果が残存している必要があります。
① 共稼ぎの夫婦の一方である夫が夫名義で不動産を取得するに際し,妻が自己の得た収入を提供した場合
② 相続人が被相続人に対し,自己所有の不動産を贈与した場合
③ 相続人が被相続人に対し,自己所有の不動産を無償で使用させた場合
④ 相続人が被相続人に対し,被相続人の家屋の新築,新規事業の開始、借金返済などのため、金銭を贈与した場合

第4 家事審判における寄与分の主張

1 具体的な寄与分について共同相続人の間で合意が得られなかった場合,家庭裁判所が,遺産分割審判が係属していることを条件として(民法904条の2第4項,家事事件手続法191条2項参照),遺産分割審判と併合して(家事事件手続法192条),家事審判で定めます(民法904条の2第2項,家事事件手続法別表第二の14項)。
    ただし,寄与分は,遺贈,相続させる遺言及び贈与に劣後します(民法904条の2第3項)から,例えば,すべての財産を特定の相続人に相続させる遺言があった場合,寄与分の主張は無理です。

2 家庭裁判所は,遺産分割審判の手続において,寄与分を定める審判の申立てをすべき期間を定めることができます(家事事件手続法193条1項)。
    また,申立期間が定められなかった場合においても,遺産分割の審理を著しく遅延させると認められ,かつ,申立てが遅滞したことについて申立人の責めに帰すべき事由があるときは,家庭裁判所は,当該寄与分を定める審判の申立てを却下することができます(家事事件手続法193条3項)。

第5 扶養義務及び扶養請求調停

1  現に扶養をしている扶養義務者の意に反して扶養権利者を引き取って扶養したという事実だけでは,引き取った他の扶養義務者が自己のみで扶養費用を負担すべきものとすることはできない(最高裁昭和26年2月13日判決)。

2 扶養権利者を扶養してきた扶養義務者が他の扶養義務者に対して求償する場合における各自の扶養分担額は,協議がととのわないかぎり,家庭裁判所が審判で定めるべきであって,通常裁判所が判決手続で定めることはできません(最高裁昭和42年2月17日判決)。

3 裁判所HPに「扶養請求調停」が載っています。

4 大阪高裁平成15年5月22日決定(判例秘書に掲載)は,以下のとおり判示しています。
(1)扶養義務者の一人が自己の分担義務の限度を超えて扶養義務を履行した場合,家事審判法9条1項乙類8号所定の審判(以下「扶養審判」という。)を申し立て,過去の扶養料につき他の扶養義務者に求償を求めることができる。この場合,家庭裁判所は,各扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して各人の扶養義務の分担の割合を定めることになる(最高裁判所第二小法廷昭和42年2月17日判決・民集21巻1号133頁)。
   すなわち,過去の扶養料の求償権は,具体的な財産上の権利であって,扶養審判を通じて行使が可能な権利であるから,その求償権を,敢えて,具体的な財産上の権利ではない「寄与分」とみたうえで,家事審判法9条1項乙類9号の2所定の審判(以下「寄与分審判」という。)を通じて行使させる必要は原則として認められない。
(2)実質的に検討しても,寄与分審判を通じて過去の扶養料の求償を求めることは,必ずしも適切ではない。
   被相続人に生活費を渡す,あるいは扶養家族の一員として被相続人を引き取るという通常の扶養は,民法904条の2所定の「その他の方法」に該当するが(同条にいう「療養看護」とは,病気や障害のため日常の起居動作が不自由な被相続人を看護・介護する行為を指す。),これが特別の寄与と認められるためには,この行為によって被相続人の財産が減少を免れ,相続開始時まで遺産が維持されたという関係が必要となり,この関係が認められた場合に限り,維持されたとみられる遺産の価額が寄与分として評価されるのである。
したがって,遺産総額が少ない場合には,そもそも寄与分制度を通じて過去の扶養料を回収することはできないし,寄与分審判の審理においては,一般に,過去の扶養料の求償権の有無及び金額を定める上で極めて重要な要素となる同順位扶養義務者の資力が調査されることはなく,その資力を考慮して寄与分が定められることもない。
   そうすると,寄与分審判によっては,過去の扶養料の求償に関する適切な紛争解決が必ずしも保障されているとはいえないから,過去の扶養料の求償を求める場合には,原則として,扶養審判の申立てがされるべきであるといわなければならない。
(3)もっとも,遺産分割の機会に,遺産分割に関する紛争と過去の扶養料に関する紛争を一挙に解決するため,過去の扶養料の求償を求める趣旨で寄与分審判を申し立てることが許されないわけではなく,実務上はそのような寄与分審判の申立ても許容されている(先行審判も抗告人の寄与分審判の申立てを不適法とはしていない。)。しかしながら,この場合であっても,寄与分の認定手法が上記(2)のとおりであることからすれば,寄与分審判と扶養審判は二者択一の関係に立つとか,寄与分審判の申立てをした以上は扶養審判の申立てが許されなくなると解すべきではない。
   すなわち,過去の扶養に関して寄与分審判で何らかの判断がされたとしても,寄与分としては認定されなかった過去の扶養に関し,本来的な権利行使の手段である扶養審判が申し立てられれば,家庭裁判所は,各扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して各人の扶養義務の分担の割合を定める必要があるといわなければならない(もちろん,寄与分が認められた分についてまで,重ねて過去の扶養料の求償が許されることにならないことはいうまでもない。)。

第6 民法904条の2の条文

〇民法904条の2の条文は以下のとおりです。
(寄与分)
第九百四条の二 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
3 寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
4 第二項の請求は、第九百七条第二項の規定による請求があった場合又は第九百十条に規定する場合にすることができる。
1(1) 交通事故及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
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(2) 相談予約の電話番号は「お問い合わせ」に載せています。
  
2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。