遺留分

第1 総論

□ 遺留分とは,被相続人の兄弟姉妹以外の相続人に対して留保された相続財産の割合をいい,総体的遺留分(=遺留分権利者全員に帰属する相続財産全体に対する割合)は,直系尊属だけが相続人である場合,法定相続分の3分の1であり,それ以外の場合,法定相続分の2分の1です(民法1028条)。
    そして,被相続人の遺言により遺留分を侵害された法定相続人は,遺留分を侵害している他の法定相続人又は受遺者に対し,遺留分減殺請求権を行使することで自分の遺留分の回復を図ることができます。
 □ 遺留分減殺の順序は以下のとおりです。
① まず遺贈が,ついで贈与が減殺されます(民法1033条)。
② 遺贈が複数の場合,その目的の価格の割合に応じて減殺されます(民法1034条本文)。
③ 贈与が複数の場合,新しい贈与から順に減殺されます(民法1035条)。
□ 遺留分減殺請求訴訟の場合,遺留分侵害額なり減殺額なりの計算が非常に困難です。
    そのため,家庭裁判所に提起する,①遺留分減殺による物件返還請求調停事件又は②遺産に関する親族間の紛争調整調停事件を通じ,家事調停を成立させるのが普通です。
    ただし,この調停は不成立になったとしても,別表第二の調停事件ではない点で家事審判に移行することはありませんから,別途,遺留分減殺請求訴訟を地方裁判所又は簡易裁判所に提起する必要があります。
□ 遺言者の財産全部についての包括遺贈に対して遺留分権利者が減殺請求権を行使した場合に遺留分権利者に帰属する権利は,遺産分割の対象となる相続財産としての性質を有しません(最高裁平成8年1月26日判決)。
□ 相続人に対する遺贈が遺留分減殺の対象となる場合においては,右遺贈の目的の価額のうち受遺者の遺留分額を超える部分のみが,民法1034条にいう目的の価額に当たります(最高裁平成10年2月26日判決)。
   そして,特定の遺産を特定の相続人に相続させる趣旨の遺言による当該遺産の相続が遺留分減殺の対象となる場合においても,以上と同様に解されます。
□ 民法903条1項の定める相続人に対する贈与は,右贈与が相続開始よりも相当以前にされたものであって,その後の時の経過に伴う社会経済事情や相続人など関係人の個人的事情の変化をも考慮するとき,減殺請求を認めることが右相続人に酷であるなどの特段の事情のない限り,民法1030条の定める要件を満たさないものであっても,遺留分減殺の対象となります(最高裁平成10年3月24日判決)。
□ 金融機関は顧客に対して守秘義務があることを理由に裁判所の文書提出命令(民事訴訟法221条)を免れることはできません(最高裁平成19年12月11日決定)。
   よって,地方裁判所又は簡易裁判所に遺留分減殺請求訴訟を提起した場合,必要に応じ,受益相続人名義の取引履歴を取り寄せることができる場合があります。
□ 訴訟手続一般に関しては,「弁護士依頼時の一般的留意点」「陳述書」「証人尋問及び当事者尋問」を参照して下さい。 

第2 生命保険金の受取人の変更と遺留分の額

□ 自己を被保険者とする生命保険契約の契約者が死亡保険金の受取人を変更する行為は、民法1031条に規定する遺贈又は贈与に当たるものではなく、これに準ずるものということもできませんから,生命保険金の受取人の変更は遺留分の額に影響を与えません(最高裁平成14年11月5日判決)。

□ 死亡保険金請求権は、指定された保険金受取人が自己の固有の権利として取得するのであって、保険契約者又は被保険者から承継取得するものではなく、これらの者の相続財産を構成するものではありません(最高裁昭和40年2月2日判決参照)。

□ 死亡保険金請求権は、被保険者の死亡時に初めて発生するものであり,保険契約者の払い込んだ保険料と等価の関係に立つものではなく,被保険者の稼働能力に代わる給付でもないのであって,死亡保険金請求権が実質的に保険契約者又は被保険者の財産に属していたものとみることもできません(最高裁平成14年11月5日判決)から,理論的には遺産に属しません。
    しかし,平成22年4月1日に施行される保険法44条は,遺言による保険金受取人の変更を認めていますから,遺言により保険金受取人を変更することが可能となりました。

第3 遺留分,寄与分及び遺贈の関係

□ 遺留分は寄与分に劣後し(民法904条の2第1項参照),寄与分は遺贈に劣後し(民法904条の2第3項),遺贈は遺留分に劣後します(民法1031条)から,遺留分,寄与分及び遺贈はじゃんけんみたいな関係にあります。
    ただし,寄与分は,共同相続人間の協議により,協議が調わないとき又は協議をすることができないときは家庭裁判所の審判により定められるものであります(民法904条の2)から,地方裁判所又は簡易裁判所における遺留分減殺請求訴訟において寄与分が存在することを理由に遺留分侵害額を争うことはできません(東京高裁平成3年7月30日判決)。
   そのため,全財産を全部又は一部の相続人に相続させる旨の遺言があるなど,遺産分割の余地がない場合,寄与分を定める審判事件が係属する余地がないこととあいまって,寄与分を定める調停を合意により成立させていない限り,遺留分が寄与分に劣後するというのは理論上の話にとどまります。
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