公正証書遺言

第1 総論

□ 昔の公正証書遺言はB5縦書きでしたが,今はA4横書きで作成されます。
□ 公正証書遺言の場合,遺言者が公証役場に行って,2人以上の証人の立会の下で,公証人に遺言書を作成してもらうことになります(民法969条)。
    ただし,事前に受任弁護士が遺言者と相談し,必要に応じて司法書士及び税理士のアドバイスを受けた上で,遺言内容が遺言者の死後に確実に実現できるような遺言書の原案が作成できた時点で,公証役場に連絡することになります。
□ 公正証書遺言の場合,①目的の価額,②相続人及び受遺者の人数並びに③予備的遺言の有無によりますものの,遺言書作成に関する弁護士費用とは別に,5万円から20万円程度の費用が必要になります。
□ 公正証書遺言は,公証役場で保管される原本(遺言者が120歳になるまで保管されます。),遺言者に渡す正本,及び遺言執行者に渡す謄本の合計3通が作成されます。
□   遺言書の謄本(=コピー)は,1枚250円の手数料を払えば,原本に基づき,公証役場で再発行してもらえます。
    ただし,遺言者が生存中,遺言者本人の他,遺言者の実印及び印鑑証明書が付いてある委任状を持参した代理人でない限り,遺言書の謄本の再発行はしてもらえません。
□ 遺言者は,いつでも,遺言の方式に従って,その遺言の全部又は一部を撤回することができます(民法1022条)。

   しかし,例えば,公正証書遺言と異なる自筆証書遺言を後日に作成するような行為は,遺言者の死亡後に遺言無効確認訴訟を誘発しますから,絶対に止めて下さい。
□ いったん作成した公正証書遺言を撤回したくなった場合,必ず,事前に依頼した弁護士にご相談下さい。
□ 遺言が公正証書遺言である場合は,法律的素養のある公証人が,遺言者の真意を確認した上で通常の公証実務で用いる用語の用法等により公正証書を作成することが通例です。

   そのため,遺言者の真意の探究は,遺言書に記載された内容を,通常の公証実務で用いる用語の用法等に従って解釈することを基本とすべきものと解されています(東京地裁平成21年10月16日判決)。

□ 平成元年以降に作成された公正証書遺言及び秘密証書遺言の場合,日本公証人会連合会の遺言検索システム(詳細につき日本公証人連合会HPの「遺言」を参照してください。)に登録されています。

   そのため,相続人であれば,被相続人の死亡後に,被相続人の除籍謄本及び自分の戸籍謄本を持参することで,全国どこの公証役場でも公正証書遺言等の有無を検索してもらうことができます。
   そして,公正証書遺言等が作成された公証役場が分かれば,その公証役場を訪問することで,嘱託人である被相続人の承継人として,公正証書遺言の原本を閲覧したり(公証人法44条1項参照),公正証書遺言等のコピーを1枚250円で受領したりできます(公証人法51条1項参照)。
□ 公証人は,①法令違反の事項,②無効の法律行為及び③行為能力の制限により取り消すことができる法律行為について,公正証書を作成することはできません(公証人法26条)。
□ 公証人は,法律行為につき証書を作成し,又は認証を与える場合に,①その法律行為が有効であるかどうか,②当事者が相当の考慮をしたかどうか又は③その法律行為をする能力があるかどうかについて疑があるときは、関係人に注意をし,かつ,その者に必要な説明をさせなければなりません(公証人法施行規則13条)。

   そのため,遺言者の意思能力に疑問がある場合,公正証書遺言を作成することができません。

第2 公正証書遺言における必要書類

□ 公正証書遺言を作成する場合,以下の書類が必要です。
 ① 遺言者の戸籍謄本
→ 遺言者と相続人との続柄を確認するためです。
    なお,相続人の法定相続分及び遺留分を正確に確認する場合,遺言者の出生時からの除籍謄本・改製原戸籍謄本をとっておく必要があります。
 ② 相続人の戸籍謄本
→ 遺言者と相続人との続柄を確認するためです。
    なお,戸籍附票又は住民票をとっておくと,後日の連絡に便利です。
③ 受遺者の戸籍謄本及び住民票
→ 本人確認のほか,受遺者の本籍を確認しておくことで,後日,確実に連絡が取れるようにするためです。
    受遺者が遺言者の親族でない場合,遺言者の戸籍から手繰ることができません。
④ 遺言者の実印及び印鑑証明書
→ 遺言者の真意を確認するとともに,遺言者の本人確認のためです(公証人法28条1項及び2項参照)。
 ⑤ 遺言執行者の住民票
→ 公正証書遺言には遺言執行者の住所を記載するためです。
 ⑥ 証人の運転免許証又は住民票,及び職業が分かるメモ
→ 本人確認のためです。
⑦ 不動産登記簿謄本(あれば)
⑧ 固定資産税・都市計画税納税通知書(あれば)
→ 固定資産税評価証明書でも結構です。
⑨ 預貯金通帳,定期預金証書のコピー(あれば)
⑩ 株券・配当金支払通知書のコピー(あれば)
⑪ 取引明細書・特定口座年間取引報告書のコピー(あれば)
⑫ 保険証券のコピー(あれば)
⑬ 車検証,自賠責保険証券,任意保険証券のコピー(あれば)
⑭ その他遺産の内容が分かる書類

第3 公正証書遺言が望ましい理由

□ 自筆証書遺言のデメリットは以下のとおりです。
① 不動産なり預貯金なりの特定が不十分な場合,名義を移転させることができません。
② 遺言書自体が紛失してしまう危険があります。
③ 一部の相続人から遺言書の有効性を争われる危険が大きくなります。
④ 形式面について公証人のチェックを受けることができません。
⑤ 公正証書遺言の場合と異なり,遺言者の死亡後,遅滞なく家庭裁判所の検認を受ける必要があります(民法1004条,家事事件手続法別表第一の103項)。
□ 自筆証書遺言の検認は,相続人に対し,遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための一種の検証・証拠保全手続であり,遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。
□ 秘密証書遺言の場合,遺言書の内容は誰にも知られずにすみます(民法970条1項参照)。
   しかし,私としては,相続人の誰にも絶対に遺言書の内容を知られたくないといった特段の事情がない限り,公証人による内容の有効性のチェックを受けられる公正証書遺言の作成を強く勧めます。

第4 公正証書遺言の証人

□ 以下の利害関係人等は,公正証書遺言の証人になることはできません(民法974条)し,公正証書遺言の作成に同席することもできませんから,血縁関係のない親しい友人なり,公証役場が紹介する証人なりに,公正証書遺言の証人をお願いするのが普通です。
□ 未成年者(1号)
□ 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族(2号)
→ 例えば,親が遺言者の場合,子供なり子供の妻なりが証人になることはできません(子供の妻につき,平成16年12月1日法律第147号による改正前の民法974条2号の文言でも証人欠格者であったことにつき最高裁昭和47年5月25日判決)。
□ 公証人の配偶者,四親等内の親族,書記及び使用人(3号)
→ ただし,公証役場が紹介した人に証人になってもらえます。
□ 遺言内容の漏洩を心配する場合,1人当たり5,000円又は10,000円の日当が必要になりますものの,公証役場に証人を紹介してもらった方が無難です。
□ 民法969条に従い公正証書による遺言がされる場合において,証人は,遺言者が同条4号所定の署名及び押印をするに際しても,これに立ち会うことを要します(最高裁平成10年3月13日判決)。

第5 公証人の任免状況

1 法務省民事局総務課公証係作成の「公証人の任免状況」を掲載しています。

2 平成18年度から平成27年度までの,公証人の定員,現在員,年齢別内訳及び前職別内訳は以下のとおりです(基準日は各年度の12月1日です。)。
平成18年度
定員:690人
現在員:512人
年齢別内訳:60歳以下が116人,61歳から65歳が289人,66歳から70歳が107人
前職別内訳:判事が147人,検事が204人,法務事務官等が161人 
平成19年度
定員:689人
現在員:509人
年齢別内訳:60歳以下が117人,61歳から65歳が265人,66歳から70歳が127人
前職別内訳:判事が146人,検事が202人,法務事務官等が161人 
平成20年度
定員:689人
現在員:507人
年齢別内訳:60歳以下が87人,61歳から65歳が279人,66歳から70歳が141人
前職別内訳:判事が145人,検事が200人,法務事務官等が162人 
平成21年度
定員:683人
現在員:501人
年齢別内訳:60歳以下が85人,61歳から65歳が264人,66歳から70歳が152人
前職別内訳:判事が143人,検事が192人,法務事務官等が166人 
平成22年度
定員:676人
現在員:499人
年齢別内訳:60歳以下が70人,61歳から65歳が265人,66歳から70歳が164人
前職別内訳:判事が145人,検事が189人,法務事務官等が165人 
平成23年度
定員:672人
現在員:499人
年齢別内訳:60歳以下が72人,61歳から65歳が269人,66歳から70歳が158人
前職別内訳:判事が141人,検事が192人,法務事務官等が166人 
平成24年度
定員:672人
現在員:502人
年齢別内訳:60歳以下が67人,61歳から65歳が286人,66歳から70歳が149人
前職別内訳:判事が141人,検事が192人,法務事務官等が169人 
平成25年度
定員:671人
現在員:501人
年齢別内訳:60歳以下が68人,61歳から65歳が277人,66歳から70歳が156人
前職別内訳:判事が142人,検事が193人,法務事務官等が166人 
平成26年度
定員:671人
現在員:498人
年齢別内訳:60歳以下が63人,61歳から65歳が290人,66歳から70歳が145人
前職別内訳:判事が139人,検事が193人,法務事務官等が166人 
平成27年度 
定員:671人
現在員:498人
年齢別内訳:60歳以下が67人,61歳から65歳が276人,66歳から70歳が155人
前職別内訳:判事が139人,検事が193人,法務事務官等が166人

第6 公証役場の活用方法

   公証役場の活用方法については,東弁リブラ2010年8月号「公証人に訊く「公証役場を活用しよう」」が非常に参考になります。
1 相談予約の電話番号は06-6364-8525であり,交通事故及び債務整理の初回の面談相談は無料であり,相続情報公開請求等の面談相談は30分3000円(税込み)です。
   交通事故及び債務整理については,無料の電話相談もやっています。
  
2 執務時間は原則として平日の午前10時から午後7時30分までですが,事前のご予約があれば,午後8時30分まで夜間相談可能です。
 
3 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)については,略歴及び取扱事件弁護士費用事件ご依頼までの流れ,「〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目7番3号 冠山ビル2・3階」にある林弘法律事務所の地図を参照してください。