遺産分割審判

第1 総論

□ 遺産分割審判では,相続人の固有財産,葬儀費用,遺産管理費用といった問題を取り扱うことはできません。

□ 遺産分割審判は,遺産全体の価値を総合的に把握し,これを共同相続人の具体的相続分に応じ民法906条所定の基準に従って分割することを目的とするものです。
   よって,共同相続人という身分関係にある者又は包括受遺者といった相続人と同視しうる関係にある者(民法990条)の申立てに基づき,これらの者を当事者とし,原則として遺産の全部について進められるべきものです(最高裁昭和50年11月7日判決)。
□ 代償分割により負担した債務が資産の移転を要するものである場合(例えば,被相続人名義の土地を単独で取得する代わりに自己名義の遊休地を他の相続人に代償分割により譲渡した場合)において,その履行として当該資産の移転があったときは,その履行をした者は,その履行をした時においてその時の価額により当該資産を譲渡したこととなります(所得税基本通達33-1の5)。
   よって,当該資産の時価が取得した時よりも値上がりしていた場合,譲渡所得が発生する可能性があります。

□ 遺産分割審判は,民法907条2項及び3項を受けて,各共同相続人の請求により,家庭裁判所が民法906条に則り,遺産に属する物又は権利の種類及び性質,各相続人の職業その他一切の事情を考慮して,当事者の意思に拘束されることなく,後見的立場から合目的的に裁量権を行使して具体的に分割を形成決定し,その結果必要な金銭の支払,物の引渡し,登記義務の履行その他の給付を付随的に命じ,あるいは,一定期間遺産の全部又は一部の分割を禁止する等の処分をなす裁判であって,その性質は本質的に非訴事件ですから,公開の法廷における対審及び判決によってする必要はないとされています(最高裁昭和41年3月2日大法廷判決)。
   また,遺産分割審判に付随してなされる寄与分を定める審判もまた,家庭裁判所が共同相続人間の実質的な衡平を実現するため合目的的に裁量権を行使してする形成的処分であって,その性質は本質的に非訟事件ですから,公開の法廷における対審及び判決によってする必要はないとされています(最高裁昭和60年7月4日決定)。

第2 遺産分割審判における,不動産の分割方法

□ 遺産の中に不動産がある場合,家庭裁判所は遺産分割審判において,以下のいずれかの方法で分割します。
① 現物分割(民法258条2項参照)
→ 被相続人の遺産の中に不動産が多数存在するか,一筆の土地でも,面積が広くて利用形態等から見ても分筆が可能である場合に利用される方法です。
② 代償分割(=債務負担による分割。家事事件手続法195条参照)
→ 遺産の不動産を取得したいと希望する一人又は数人の相続人にそれを取得させ,遺産取得の超過分を債務負担という方法で清算させる方法であり,現物分割と併用して行われます(最高裁平成11年4月22日判決の裁判官遠藤光男,同藤井正雄の補足意見参照)。
   この方法をとるためには,①遺産の価格が適正に評価され,代償金の額が適正に算定されること,及び②具体的相続分を超える遺産を取得する相続人に,代償金支払能力があることが必要です(②の要件につき最高裁平成12年9月7日決定参照)。
   例えば,②につき,銀行支店長名義の融資証明書なり預金通帳の写しなりで確認します。
③ 換価分割
→ 遺産の不動産を現物分割することができず,かつ,代償分割をすることもできない場合(例えば,(a)相続人に代償分割の債務負担能力がない場合,及び(b)不動産に多額の抵当権が設定されていて相続人に返済能力がない場合)に行われる方法です。
換価分割の場合,その不動産を換価して,その代金から換価に要する経費等を除いた残額を,共同相続人が分けることになります。
   換価の方法には,(a)終局審判における遺産の競売(民法258条2項),及び(b)審判前の遺産の換価(家事事件手続法194条1項ないし3項。具体的には,任意売却又は競売になります。)があります。
   (b)審判前の遺産の換価を行う場合,共同相続人の中から換価人が選任される他(家事事件手続法194条1項及び2項参照),売却代金を保管する財産管理者(家事事件手続法201条1項)として通常,当該換価人の代理人弁護士が選任され,終局審判まで売却代金を保管することになります(競売の場合につき民事執行規則181条,任意売却の場合につき家事事件手続法103条7項参照)。
   その後,財産管理者は,終局審判に従って各共同相続人に売却代金を分配することになります。
④ 共有取得
→ この方法は,後日に共有物分割の問題(民法258条1項)を残すので,(a)現物分割,代償分割ができず,しかも換価を避けるのが相当であるような場合(例えば,その不動産が共同相続人の一人の居住用不動産である場合),又は(b)当事者が共有による分割を希望し,それが不当でない場合のような限られた場合に行われます。
□ 代償分割の場合,遺産の不動産を取得した相続人が後日,当該不動産を売却した際,譲渡所得税を課税されることがあります。
□ 相続により相続人の共有となった財産の分割について,共同相続人間に協議が整わないとき,又は協議することができないときは,家事事件手続法の定めるところにより家庭裁判所が審判によってこれを定めるべきものであり,通常裁判所が判決手続で判断すべきではありません(最高裁昭和62年9月4日判決参照)。

第3 遺産分割審判の確定時期及び効力

□ 相続人は,遺産の分割の審判に対して即時抗告をすることができ(家事事件手続法198条1項1号),その期間は,相続人が当該審判の告知を受けた日から2週間と定められています(家事事件手続法86条1項)。
    そして,2週間が経過した時点で遺産分割審判が確定し,効力を生じることとなります(家事事件手続法74条2項ただし書)。
□ 相続人は,各自が単独で即時抗告をすることができますものの,遺産の分割の審判は,相続人の全員について合一にのみ確定すべきものですから,相続人の1人がした即時抗告の効果は,他の相続人にも及ぶものであり,相続人ごとに審判の告知を受けた日が異なるときは,そのうちの最も遅い日から2週間が経過するまでの間は,当該審判は確定しません(家事事件手続法86条2項のほか,かつての家事審判法時代の判例として最高裁平成15年11月13日決定)。
□ 各相続人への審判の告知の日が異なる場合における遺産の分割の審判に対する即時抗告期間については,相続人ごとに各自が審判の告知を受けた日から進行しますから,相続人は,自らが審判の告知を受けた日から2週間を経過したときは,もはや即時抗告をすることは許されません(家事事件手続法86条2項のほか,かつての家事審判法時代の判例として最高裁平成15年11月13日決定)。
□ 寄与分を定める処分の審判に対する即時抗告(家事事件手続法198条1項4号)についても,遺産分割審判に対する即時抗告の場合と同様の取扱いとなります(最高裁平成15年11月13日決定)。
□ 確定した遺産分割審判は,金銭の支払,物の引渡し,登記義務の履行その他の給付を命ずる部分について,執行力ある債務名義と同一の効力を有します(家事事件手続法75条)。
    よって,確定した遺産分割審判に違反した場合,強制執行をされる可能性があります。
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