限定承認

第1 総論

□ 限定承認をするためには,相続放棄をした相続人を除く,共同相続人の全員が共同してする必要がありますし(民法923条),自己のために相続の開始があったことを知った時(通常は,被相続人の死亡を知った日)から3ヶ月以内に,限定承認をする旨を家庭裁判所に申述する必要があります(民法924条,家事事件手続法別表第一の92項)。

□ 相続人が,①被相続人の財産をもって被相続人の債務を公平に弁済して相続債権者にできる限り迷惑をかけないとともに,②次順位の相続人(例えば,両親及び兄弟姉妹)に相続放棄等の手続の手間をかけさせないためには,限定承認をする必要があります。
□ 被相続人の債務につき債権者より相続人に対し給付の訴が提起され,右訴訟において該債務の存在とともに相続人の限定承認の事実も認められたときは,裁判所は,債務名義上相続人の限定責任を明らかにするため,判決主文において,相続人に対し相続財産の限度で右債務の支払を命じます(最高裁昭和49年4月26日判決)。
□ 相続財産の限度で支払を命じた,いわゆる留保付判決が確定した後において,債権者が,右訴訟の第二審口頭弁論終結時以前に存在した限定承認と相容れない事実(たとえば民法921条の法定単純承認の事実)を主張して,右債権につき無留保の判決を得るため新たに訴を提起することは許されません(最高裁昭和49年4月26日判決)。
□ 不動産の死因贈与の受贈者が贈与者の相続人である場合において,限定承認がされたときは,死因贈与に基づく限定承認者への所有権移転登記が相続債権者による差押登記よりも先にされたとしても,信義則に照らし,限定承認者は相続債権者に対して不動産の所有権取得を対抗することはできません(最高裁平成10年2月13日判決)。

   つまり,死因贈与に基づいて被相続人の財産をもらった上で,限定承認に基づき,被相続人の借金を踏み倒すようなことはできないということです。
□ 民法934条1項の損害賠償請求の根拠とされる民法927条2項が準用している民法79条3項が,個別に請求の申出を催告する対象を「知れたる債権者」としていることからすると,民法934条1項の損害賠償責任を負うのは,相続の限定承認に基づく清算手続の実施の時点(正確には限定承認の公告の際に定めた相続債権者及び受遺者による請求の申出の期間内)において,限定承認者が相続債権者あるいは受遺者であると認識していたにもかかわらず,あえて当該債権者等に対し個別の催告をせず,または,失念あるいは法律の規定の不知により個別の催告を怠ったような場合に限られると解されています(東京地裁平成13年2月16日判決)。

第2 限定承認は非常に複雑な手続であること

限定承認をするためには,相続財産の目録(民法924条)を作成した上で,共同相続人の全員が共同してする必要があるほか,相続人が複数いる場合,共同相続人の中から相続財産管理人の候補者を用意する必要があります(民法936条,及び家事事件手続法201条3項参照)。

   そして,家庭裁判所による,相続放棄の申述受理の審判が確定すると,相続財産管理人は,家庭裁判所の手続外で,①審判の日から10日以内に相続債権者及び受遺者(=遺言により財産を受け取る人)に対する公告(=株式会社かんぽうを通じ,官報に公告文を掲載すること。)及び個別の催告をしたり(民法936条3項・927条),②相続債権者及び受遺者に対して按分弁済をしたり(民法929条),③相続財産としての不動産を売却する場合は競売に付したり(民法932条本文)する必要があります。

   また,土地建物につき,被相続人が,相続人に対し,相続が発生した時点で,時価で譲渡したとみなされる結果,現実に売却していない場合であっても,譲渡所得に起因する所得税が発生し(所得税法59条1項1号),翌年3月までに確定申告をする必要があります(所得税法120条)。

    さらに,限定承認をした相続人が消極財産(=相続債務)を悪意で財産目録中に記載しなかった場合にまで法定単純承認が成立してしまいます(最高裁昭和61年3月20日判決)から,積極財産及び消極財産の全部を必ず財産目録に記載する必要があります。

   このように限定承認は非常に複雑な手続ですから,弁護士の助力を得ながら手続を進めた方が無難です。

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