相続放棄の注意点等

第1 総論

□ 例えば,死亡した父に借金があり,母と子供全員が相続放棄をした場合,第2順位である父の両親が相続人となり,父の両親が相続放棄をした時点で第3順位である兄弟姉妹(結婚により苗字を変えている場合を含む。)が相続人となります。

   そのため,自分たちが相続放棄をしたことを,必ず次の順位の相続人に知らせることで確実に相続放棄をしてもらう必要があるのであって,全員が順次,相続放棄をしない限り,相続放棄をするのを忘れた相続人が借金をすべて引き継ぐことになるのです。
□ 父の両親が相続放棄をした時点で父の祖父母が生存している場合,父の祖父母まで相続放棄をした後に,第3順位である兄弟姉妹が相続放棄をする必要があります。
□ 医療保険の受取人は通常,被相続人です。

   そのため,「後遺障害保険金」,「入院給付金」,「通院給付金」,「傷害医療費用保険」等の保険金を受領した場合,相続放棄できなくなる可能性があります。

□ 家庭裁判所は,相続放棄の申述を却下すべきことが明らかな場合を除き,これを受理すべきである(東京高裁平成22年8月10日)とされています。
   そのため,仮に3ヶ月の期間制限が過ぎている場合であっても,直ちに弁護士に相談すべきです。 

第2 先順位の相続人が相続放棄をしても,裁判所からの連絡はないこと

□ 被相続人の妻及び子どもといった先順位の相続人が相続放棄をしたとしても,次順位の相続人に対し,裁判所からその旨の連絡が来ることはありません。
   そのため,先順位の相続人が相続放棄したことを知った場合,次順位の相続人は,知った日から3ヶ月以内に相続放棄をする必要があります。
   特に,先順位の相続人の相続放棄の理由が被相続人の借金であることを知っている場合,次順位の相続人は,知った日から必ず3ヶ月以内に相続放棄をする必要があるのであって,債権者からの借金の通知を無視して相続放棄の手続を取らないことは非常に危険です。

第3 被相続人の借金から確実に逃れたい場合,相続放棄をする必要があること

□ 被相続人に借金があった場合,相続人は,相続分に応じて被相続人の借金を承継することになるのであって,遺産分割協議でこれと異なる定めをしたとしても,債権者の同意がない限り,債権者に対抗することはできません。

    そのため例えば,被相続人が銀行から多額の借金を抱えていた場合,銀行の同意がない限り,長男だけが銀行の借金を負担するといった取り決めをしたとしても,銀行に対抗することはできません(ただし,相続税における債務控除の計算では意味があります。)。
    そのため,被相続人が抱えていた借金から確実に逃れたい場合,原則として,自己のために相続の開始があったことを知った時(通常は,被相続人の死亡を知った日)から3ヶ月以内に,相続放棄を家庭裁判所に申述する必要があります(民法938条,家事事件手続法別表第一の95項)。

第4 相続放棄は,実際に相続が発生した後でないとできないこと

□ 相続放棄は,実際に相続が発生した「後」でない限りできないのであって,この点では,家庭裁判所の許可を受ければ生前にも行える遺留分の放棄(民法1043条1項,家事事件手続法別表第一の110項)と異なります。

   つまり,被相続人が死亡する前に,口頭なり書面なりで相続財産はいらないと約束していたとしても,それは相続放棄ではありませんから,法律的な効力はありませんし,家庭裁判所の許可を受けていませんから,遺留分の放棄としての意味もありません。

第5 親にすべての財産を相続させるためには遺産分割協議による必要があること

□ 例えば,父の相続の際,母にすべての財産を相続させるため,第1順位の相続人である子供全員が相続放棄をしても,第2順位である父の両親なり,第3順位である父の兄弟や甥・姪なりに権利が移るのであって,母の相続分が増えるわけではありません。

    そのため,母にすべての財産を相続させたい場合,母と子供全員が,母にすべての財産を相続させる旨の遺産分割協議書を作成する必要があります。

第6 場合によっては,事後的に法定単純承認が成立すること

□ 家庭裁判所で相続放棄申述受理の審判を受けたとしても,例えば,被相続人の財産を処分していたといった事情(例えば,被相続人名義の不動産を自己名義に変えた。)が後日判明した場合,民法921条1号本文に基づき,法定単純承認が成立してしまいます(最高裁昭和29年12月24日判決。なお,相続放棄後に滞納処分による差押えがなされた事例につき平成10年2月19日付の国税不服審判所の裁決参照)。
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